掲載日 2023.10.03
亡くなることはなくても、ひとたびがんにかかってしまうと多額の治療費や治療期間の時間的損失、精神的負担など、さまざまな損失が人生に影響を及ぼします。
がんがいかに経済的な損失を招いているのか、予防できるがんはあるのか、といった疑問にお答えしつつ、がんを予防するノウハウとメリットについて解説します。
現役の労働者ががんにかかると、治療する必要が生じます。満足に働けない期間が生まれるため、そこで労働損失が発生します。こうした労働損失は日本全体で年間1.8兆円にのぼるとの試算もあり、がんにかかった本人や家族への影響だけでなく日本経済への損失も大きいといえます。
日本人の2人に1人が罹患する病気であることを考えると、これだけの経済損失が出てしまうのは不可避かもしれません。毎年のようにこれだけの多大な経済損失の原因のひとつになっているがんに有効な対策を打ち出し、日本人の健康と日本経済への悪影響を抑制することは大きな課題と言えるのではないでしょうか。
国立がん研究センターが発表している調査結果によると、がんの要因TOP3は以下のようになりました。
▽がんの要因TOP3
男性 | 女性 | |
1位 | 喫煙 | 感染症要因 |
2位 | 感染性要因 | 喫煙 |
3位 | 飲酒 | 飲酒 |
参考:国立がん研究センター「科学的根拠に基づくリスク評価とがん予防ガイドライン提言に関する研究」
男女ともにTOP3を構成する要因は同じです。しかし、微妙に順位が異なります。特に女性の1位である感染性要因は17.5%で、2位にある喫煙の5%を圧倒する高さです。女性の感染性要因にはヒトパピローマウイルスによる子宮頸がんが多くを占めていると考えられます。
男女共通の感染性要因としてはピロリ菌による胃がん、肝炎ウイルスによる肝がんなどが挙げられます。
そして男女ともに生活習慣に由来する要因として喫煙と飲酒がランクインしています。この両者はいずれも生活習慣の改善によって予防できるがん要因であることが注目に値します。
がんの発生要因TOP3を見てもおわかりのように、喫煙と飲酒はいずれも生活習慣によってもたらされる要因です。つまり大多数のがんは生活習慣を改善することによって予防できます。しかもがんの予防を目的として喫煙と飲酒の習慣を改善するとほかの病気を予防する効果も期待できるので、まさに一石二鳥です。
それでは、生活習慣をどのように改善するのがよいのでしょうか。これについても国立がん研究センターが予防項目とポイントを解説しているので紹介します。
男性のがん発生要因の1位であり、29.7%もの圧倒的な比率である喫煙は「百害あって一利なし」です。たばこはがんの発生リスクを高めるだけでなく、ほかのさまざまな健康被害の引き金になります。禁煙をするのが理想ですが、すぐには難しい方は少しずつ本数を減らして禁煙を目指しましょう。
過度の飲酒は消化器系だけでなく肝臓や乳房などのがんのリスクを高めることがわかっています。お酒に酔う主成分であるエタノールは体内に入るとアセトアルデヒドに代謝され、これががんの原因になると見られています。さらに過度の飲酒で栄養が偏ってしまうなどの二次的な作用もがんのリスクを高めます。
規則正しく栄養のバランスを考えた食習慣ががんのリスクを抑制することは言うまでもありませんが、野菜と果物を摂るとさまざまな作用でがんのリスクを下げる効果が期待できると報告されており、こうした食べ物を積極的に採り入れることは意義があります。
適度な運動にはさまざまな部位のがん発生リスクを下げる効果があります。肥満の解消や免疫機能の増強、内臓機能の活性化などがん予防だけでなく健康効果がとても高いので、適度な運動習慣を持つようにしましょう。
がんは未知の部分も多い病気なので、完全な予防法が確立されているわけではありません。しかし、リスクや確率を下げる方法はあるので、それを日々の生活に採り入れてがんになりにくい体を目指しましょう。
がんは健康を害し、命に関わるような事態を招くだけでなく、多額の治療費や治療期間の仕事や生活への影響など、有形無形の損失をもたらします。
病気はかかってから治療するよりも、予防するほうがはるかに軽い負担で済む可能性が高くなります。がんだけでなくあらゆる病気を予防することでQOL(生活の質)を高め、健康寿命が長く、実り多き人生を手に入れたいものです。
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